基板実装

FPC基板実装:③キャリアボードの種類について(メリット・デメリット)

FPC基板実装シリーズの第3弾です。
今回は、FPC実装をする際に使用するキャリアボードについて解説をしていきます。

・FPC実装用のキャリアボードに種類ってあるの?

FPCを実装するためのキャリアボードは様々な種類が存在します。
今回は当社で使用しているキャリアボードについてその特徴などをふまえてまとめていきます。

キャリアボード種類特徴メリット・デメリット品質

アルミキャリアボード

文字通り、アルミ板。FPCを耐熱テープで貼り付けて固定。

メリット:制作コストが安い。

デメリット:FPCをテープで貼り付けるため、量産や精度の必要な製品には向かない。部分的に固定しているのでFPCが反ってしまい、はんだ付け不良が発生する。

粘着性キャリアボード
 
粘着性があるため、テープなどで固定せずにFPCを貼り付ける。

メリット:粘着するためテープの固定が不要である。面で粘着されたFPCは平坦度が保たれ、良好なはんだ付けができる。

デメリット:補強板や銅ベタ部分などで反りが強いFPCは、粘着させることで膨張する基板の逃げ場がないため、粘着されていない面に向かって大きな反りが発生することがある。

磁性キャリアボード
キャリアボードにマグネットが仕込まれており、薄いSUSとキャリアボードでFPCを挟み込む。

メリット;反りが強いFPCなど、熱膨張しても挟み込みのため逃げ場があることからことがFPCの反りを抑制できる。

デメリット;製作コストが高い。メタルマスクも両面にエッジングを入れる特殊加工が必要。

上記のような特徴やメリット・デメリットがあります。
それぞれのキャリボードについてメリットたデメリットについて詳しく見ていきましょう。

1, アルミキャリアボード

アルミ板にFPCを載せ、耐熱テープで固定します。アルミ板に載せることで、リフロー炉などのコンベア搬送の必要な設備を使用できるようになります。
ただし、当社ではアルミキャリアボードにFPCをカプトンテープで止めて実装する方法はほとんど行いません。この方法には下記に記載するデメリットがあるためです。

・デメリット 平坦度が出ない・固定用テープを貼ることで厚みが出てしまう。

部分的にテープを用いて固定しているため、固定していないFPCは反ってしまったりと平坦度の確保ができません。基板実装には平坦度が非常に重要です。実装部の曲がりや反りが出てしまい、これではうまく部品実装ができません。また張り付けたテープの分だけ厚みが出てしまいますので、はんだペーストの印刷量にも影響を与えてしまいます。

カプトンテープで固定したFPC
2, 粘着キャリアボード

粘着性のある耐熱キャリアボードです。
当社での対応で一番多く使用されています。粘着性があることから、補強板の配置ができない箇所でも平坦度を保ち実装することができます。またテープ等で固定する必要がないので、はんだペースト印刷量も安定します。アルミ板にカプトンテープに固定したものと比較すると、明らかに平坦度に差がありますね。この差がそのまま実装品質へ影響してくるわけです。

粘着性キャリアボードに貼り付けたFPC

また裏面に部品が実装されるFPCの場合は、下の写真のように部品を避けた専用のキャリアボードを制作します。

部品逃げの開口や座ぐりを設けた専用キャリアボード

そんな便利な粘着性ボードにもデメリットがあります。

・デメリット 粘着させることで反りや曲がりが強く出るケースがある。

粘着性のボードは、非常に便利な点がある一方で、反りや曲がりを強く表れてしまうケースがあります。これは、FPCの膨張が大きいものでより強く現れます。一般的な鉛フリーはんだを使用した場合、リフロー炉によるはんだ付け時に、FPCには240°前後の熱が加わります。補強板や接着剤の膨張率の違いや基板パターンの入り方によって反りが発生します。FPCはキャリボードに粘着されていることでこれらの膨張に対して逃げ場がなく、粘着から剥がれて上方向に逃げようとしてしまうわけです。この状態が発生してしまうと、平坦度は保てず実装品質は維持できません。

3, 磁性キャリアボード

粘着ボードで抑えられない反りに対しては、この磁性キャリアボードが有効です。
磁性キャリボードの仕組みは、マグネットの仕込まれたキャリアボードにFPCをセットし、上から部品搭載部に開口が開いたSUSでカバーします。キャリボードにマグネットが仕込まれていることから、SUSは固定され、FPCはキャリボードとSUSに挟まれ固定されます。粘着せず、挟み込んでいることから熱によるFPCの膨張に対して、逃げ場を設けることができていることから反りの発生を抑えることができます。

1、マグネットが仕込まれたキャリアボード
2、FPCを整列させる
3、SUSで載せてFPCを挟み込む
4、セットの完了した磁性キャリア

・デメリット 製作コストが高い!

この磁性キャリアは、品質面においては一番安定性があります。ただし、製作コストが高いことが最大のデメリットです。反りに対して問題のある製品、数を多く作る量産機種であれば、このキャリアボードを選択した方が良いと思います。また、FPCのみならず最近ご依頼の多い薄物のリジット基板にも使用することができます。

投稿者プロフィール

園部 慎也
園部 慎也
ビックライズ代表取締役COO。
提案のできる会社を目指し、日々奮闘しています。
これまでの経験、実績から「役立つ内容のブログ」をテーマに配信していきます。

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